ライフリズムナビ
導入事例

稲城市の
地域包括ケアを支える
見守りシステムの
意義と役割

稲城市 高齢福祉課 高齢福祉係

係長 荒井 崇宏 様

荒井 崇宏(あらい たかひろ)
平成21年4月稲城市役所入庁。高齢福祉課 介護保険係に配属となり、平成26年4月に他部署に異動するまで、資格管理、保険料賦課徴収、保険給付、介護認定、計画策定などに従事。平成31年4月から令和2年3月まで厚生労働省老健局介護保険計画課の計画係長として出向。第8期介護保険事業計画の基本指針策定や全国への計画策定説明等に従事。令和3年4月から稲城市 福祉部 高齢福祉課 高齢福祉係 係長を務める。

稲城市公式HP:https://www.city.inagi.tokyo.jp/
稲城市在宅高齢者見守りセンサーサービス概要ページ:https://www.city.inagi.tokyo.jp/kenko/koureifukushi/koureisya_mimamori/mimamori_sensor.html

東京都の多摩地域南部に位置する稲城市は人口約9万人ほどの街です。自治体で高齢者を対象とした介護予防や地域包括ケアシステムの構築に力を入れて取り組まれています。
今回は、高齢者向け事業の中核を担う稲城市 高齢福祉課 高齢福祉係の荒井 崇宏 係長に、高齢者見守り施策の1つであるライフリズムナビ®+HOMEを用いた「センサー見守りサービス事業」について詳しくお伺いしていきます。

ICTを活用した高齢者見守りを
構想したきっかけ

荒井様: 人口推計の中で、高齢者人口はこれからどんどん増えていきます。その一方で、生産年齢人口は下がっていくという点はもう見えている未来であり、何かしなければいけないというのは私が高齢福祉課に来る前から漠然とあったと思います。そのような中で、「センサー見守りサービス事業」は、今年度(2022年度)から始まりました。
これまでもICTを活用した見守りというのはありましたし、私が厚労省にいた時にも介護分野でロボットやAI、ICTの活用を進めていかなければならないという話が出ていました。

施策を検討していた当時の課長とも「見守り電球みたいなものがあるよ」、「こういうセンサーを使った見守りもあるよね」といった話をしていて、そのようなサービスが稲城市の見守りの打つ手になるかもしれない、活用することで対面見守りの補完にできるかもしれない、と考え始めたのがきっかけでした。

稲城市 高齢福祉課 高齢福祉係 荒井係長

ライフリズムナビ+HOMEを
選んだ理由

見守りサービスはさまざまあるかと思いますが、その中でライフリズムナビ+HOMEを選んだ理由をお伺いできますか?

荒井様: 確かにさまざまなサービスがあって、種類も多数あると思います。いろいろ検討したのですが、稲城市としては日常生活はこれまで通りに過ごしていただいて、それを緩やかに優しく見守るといいますか、「見守られている」こと自体をあまりご利用者様に感じさせないで生活していただけるようなシステムを導入したいなと考えていました。

稲城市では、高齢者施策の一環として、すでに警備会社さんと行っている緊急通報システム※1もありますので、必要な方はそちらを利用していただけます。一方、今回のICTを活用した見守りにおいては、「優しい見守り」ができるものが良いと考えました。

電球サービス※2も同様ですが、ライフリズムナビ+HOMEはベッドセンサーを布団の下に敷くだけ、温湿度センサーやエアコン操作のリモコンなども小さく、ご利用者様の日常生活を大きく変えずに済みます。
例えば、家の中にカメラがあって常に見られている感じがあったり、人感センサーが目についてしまうようだと、これまでの生活とは変わってしまいます。ライフリズムナビ+HOMEなら最低限の変化で見守れますし、しかもセンサーから取得したデータは蓄積され、それをプロの支援者であるケアマネさんや包括の職員が活用できます。

ライフリズムナビ+HOMEはシステム表示も「寝ています」「ベッドにいます」「ベッドにいません」がわかる程度で、それ以上プライベートに踏み込まないんですよね。
「今、トイレに行きました」という情報は、ケアをする側としては欲しいデータかもしれませんが、そこまで知られてしまうのは自分だったら嫌だなと思います。
「寝ています」「ベッドにいます」「ベッドにいません」の状態データからでも、「夜中に起きておそらくトイレに行ったんだろう」、「この時間に水を飲んでいるのかな」といった推測はできますが、実際にご利用者様のプライベートまでは見えない。ライフリズムナビ+HOMEにはそういう優しさがあるのが良いと感じました。

アイコン表示でベッド上の状態がわかります。さらに、室内に設置した温湿度センサーにより、お部屋の温度、湿度といった情報もリアルタイムに確認が可能です。

荒井様: 機能面でいうと、もっと多数の機能が付いている在宅見守りもありましたが、ちょっと値段が上がってしまって……。機能や設置する機器などを比べる中で、必要なデータがわかる、さらに予算的な部分との兼ね合いなどから東京ガスさんのライフリズムナビ+HOMEがちょうど良かった。機能詳細や価格を東京ガスさんから伺い、稲城市の指名競争入札に参加いただいた結果、落札となりました。

※1 緊急通報システム
稲城市の、家庭の電話回線を利用した緊急通報装置と生活反応を感知して自動発報する装置を設置するサービス。
https://www.city.inagi.tokyo.jp/faq/kenko/koureifukushi/kinkyuutuuyou.html

※2 稲城市在宅高齢者見守り電球サービス
見守り電球を自宅トイレなどに設置し、点灯・消灯から高齢者の活動を検知、お知らせするサービス。24時間、点灯・消灯の動きがない場合、事前に設定したご家族や知人など通知先へメールで通知。通知先の方がすぐに訪問できない時には、依頼に応じて委託事業者スタッフが訪問する。
https://www.city.inagi.tokyo.jp/kenko/koureifukushi/koureisya_mimamori/mimamori_denkyu.html

ICT導入には「高齢社会対策区市町村包括補助事業※3」をご利用されたとお聞きしました。

荒井様: さまざまな高齢者施策に使える補助金を用意してくださっているんですけど、その中でICTを活用した高齢者の見守りに使用できる補助金みたいなものがありました。それは、ただ機器を付けたら、かかった費用を補助してくれるということではなくて、それを元にネットワーク化をするとか、地域づくりに生かすというのが目的だったため、その補助金の考え方と稲城市でやろうとしているICT導入はすごく合致していると思い申請させていただきました。東京都の補助金はすごくありがたかったと思います。

※3 高齢社会対策区市町村包括補助事業
東京都福祉局が行う区市町村が地域の実情に応じ、創意工夫を凝らして主体的に実施する福祉・保健・医療サービスの向上を目指す取組みを補助する事業。

ライフリズムナビ+HOMEの
普及や使用までの流れ

ライフリズムナビ+HOMEのご利用はケアマネさんが判断をされているんでしょうか?

荒井様: そうですね。ライフリズムナビ+HOMEについては、誰でもどうぞというサービスにはしていません。
稲城市の見守り電球サービスは、75歳以上でお独り暮らしの方であれば、どなたでもお申し込みいただけるようにしています。一方で東京ガスさんのライフリズムナビ+HOMEは、リスクのある方、具体的には「認知機能面で心配がある高齢者の方」向けという点が、うまくマッチしているのではないかと思っています。

そのため、地域包括支援センター、あとは看護小規模多機能型居宅介護(以下、看多機)、小規模多機能型居宅介護(以下、小多機)といったサービスのケアマネさんにご案内をしています。ご利用者様の中で「この方は使った方が安心だな」という方にはライフリズムナビ+HOMEをご案内し、ご本人やご家族が使いたいと考えれば申請していただき、市が状況を確認したうえでご利用いただけるようにしています。東京ガスさんにセンサー機器を設置してもらった後は、毎月のサービス料金を市が補助しています。

稲城市の「ライフリズムナビ+HOME」のサービス提供図

看多機、小多機のご利用者様がメインでライフリズムナビ+HOMEをご使用されているのでしょうか?

荒井様: 当初はそういう想定でしたが、看多機、小多機以外のサービスを受ける要支援認定の方もご利用されていますし、要介護認定を受けている方もケアマネさんからご紹介されてお申し込みという場合もありました。看多機、小多機のご利用者の割合が多いかなという感じですが、狙いとしてはお独り暮らしで在宅生活に不安が出てきた方という状態像は合っていると思っています。

導入から1年で振り返る、
導入効果と今後の課題

2022年3月から「センサー見守りサービス事業」を開始して、そろそろ1年というところですが、感想をお伺いできますでしょうか?

荒井様: 事業としては概ね順調に進んでいると感じています。ご利用者様の反応もいいですね。使っているご本人だけではなく、ご家族だったり、ヘルパーさん、ケアマネさん、あるいは近くにお住まいのご友人といったライフリズムナビ+HOMEのシステムをご利用されている方々全体で評判が良いと感じています。
また、東京ガスさんと進められた大きなメリットは、やはりネームバリューがあって安心感があるという点です。ご利用者様も安心して申し込んでいただいているなと率直に感じています。

導入効果の面ではいかがですか?

荒井様: ケアマネさんから、夏場に熱中症が心配なご利用者様について、お話を伺ったことがあります。この方は、ライフリズムナビ+HOMEを導入したことで、「夏場に室温が上がってしまった際も、アプリからクーラーの電源を入れて温度管理ができました」とお声をいただきました。今までは、周りの方々がご利用者様の熱中症を心配して、何度もお宅訪問や電話をしていたそうですが、アプリを利用することで1日1、2度の訪問で安心して見守ることができたそうです。

また、睡眠データを確認することで昼夜逆転に気づき、お医者様への相談やケアプランの変更を行ったり、さらに「デイサービスで何かしましょう」、「家の中の過ごし方を変えてみましょう」といった、新たなプランニングを考えることに繋がりましたというケアマネさんもいらっしゃいました。
この方は、ライフリズムナビ+HOMEを活用することで、ご本人も周りの方も、最期まで安心して暮らすことができたというお声をいただきました。市としてもライフリズムナビ+HOMEを導入してすごく良かったなと思います。実際に活用し、救われた方がいるというのは、私たちとしても導入した甲斐がありましたし、もっと進めていこうという勇気をもらえました。

実際に活用されているケアマネジャーさんから一言

“担当している方の生活が昼夜逆転しており、夜中にチャイムを鳴らされたりといった話をご近所の方から聞き、ご本人もどうしたらいいか困っている状態でした。お医者さんと「まずは、ご本人の生活リズムがどうなっているのかを知った方がいいよね」と相談している中で、稲城市の「センサー見守りサービス事業」の話がありました。”

スマホからライフリズムナビ+HOMEの管理画面を確認している様子。

“導入後、管理画面でご利用者様のデータを見たときに、「思っていたよりも、ちゃんと眠られている」ということが確認できて安心しています。”

それは大きな成果ですね!では次に、今後の課題やシステムに対する要望などがありましたら教えてください。

荒井様: 今後ですが、市としては「見守られる方」を「核」にして、一人の方に対してどれだけ多くの支援者がいるか、そしてその支援者のネットワークが見える化できるといいなと思っています。
例えば、今までは、ご友人は友人としての関係で見守っている。ご家族は家族として、ご親族は親族として見守っている。もちろんケアマネさんやヘルパーさんとご家族は繋がりはあるかもしれませんが、一人暮らしの方の場合はヘルパーさんとご家族さんは直接的には、さほど関わらない関係という場合もあります。「本人と支援する人」、「本人とお友達」、「本人とご家族」といった、それぞれの関係性だけで見守っていたのが今までだと思います。

それを、ご本人を「核」にして、ご友人や支援する方、ご家族、近所の民生委員さん、そういった方たちが、お互いにお互いを把握して「見守ってるんだね」「じゃあ安心だね」となる小さなネットワークを市の中にいっぱいつくりたいです。それってすごく安心な街だと思うんです。

また、その見守りに今は関係していない方たちも、「もし『いざ』となっても、この地域はそうやって小さな見守りのネットワークが構築できる地域なんだ」と感じていただければ、みんなが将来も安心して暮らせる街になると思ってます。そこまで発展していければ、すごく素敵ですよね。
機能面では、例えばアプリの中にチャット機能があって、「今、見に行ってきたけど、大丈夫だったよ」とか「今日は夕ごはんしっかり食べてました」といったコミュニケーションができると、見守る人たちの間ですごく安心感あるかもしれないですね。

ICTを活用することで
行政の見守りはどう変わっていくか?

荒井様: ICTを活用することで、どう変わるかというのは難しい話だと思いますが、ICTを使うという点については段々と当たり前のものになっていくのではないかと思っています。
最近だと防犯カメラをつけるお宅も多くなっていますし、家の中を確認する製品もでてきています。そのため「離れたところから確認できる」というサービスは、今後、私たちの生活の中に根付いていく気がしています。

高齢者の見守りに関しては、ICTを活用して「普通に生活していれば、ちゃんと誰かが支えてくれるので、安心して暮らせますよ」というようなネットワークづくりをしたい。メールやプッシュ通知などの機能をうまく使って、何かがあった時に誰かに知らせが届くことで、お互いが安心した生活を送れるようになる。そしてそれらを対面で行うケアと組み合わせて使っていくように、シフトしていくのかなと思います。 高齢者の皆さんに安心して暮らし続けてもらうために、対面で行うケアは絶対に必要ですが、増えていくであろう介護の負担をICTを活用してどう補完や補助をしていくか、今後さらに重要になると考えています。

活用POINT! ライフリズムナビ+HOME【招待機能】

代表者がほかの方を「見守る人」として、「追加招待」できます。招待された人それぞれがアプリから対象となるご利用者様を見守ることが可能です。

探訪後記

人口9万人の稲城市様が取り組まれている在宅介護×見守りシステムは『独居』の見守りの概念を変えつつあります。『介護』=『負担』の言葉は用いられず、在宅介護の方へ『見守りサービス』を、+そっと、+みんなで、+HOMEを稲城市の高齢環境と融和するようにセンサー技術を活用いただいております。
自治体主導かつ、気負わない参加スタイル、ケアマネや在宅介護事業者も使用できるプロへの配慮の仕方など、今後の在宅見守りシステムのあり方に資する事例です。
ライフリズムナビ サポートメンバー一同、よりよい高齢者向け在宅見守りサービスとしていけるよう、お客様の声を常に反映し展開してまいります。

もっとライフリズムナビ+HOMEが知りたい方へ

ライフリズムナビ+HOMEは、在宅向けの高齢者見守りシステムです。
個人の方から、事業所、行政まで幅広くご相談を受け付けております。まずは、お気軽にご相談ください。

ライフリズムナビはエコナビスタ株式会社の登録商標です。
「ライフリズムナビ+HOME」はエコナビスタの知見・データおよび解析技術に、東京ガスが培ってきた住まいと暮らしに関わるニーズやお困りごとに関する知見を組み合わせ、共創したサービスです。

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