介護付有料老人ホーム
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 横浜エデンの園
横浜エデンの園 園長 小久保 ゆき 様/ケアサービス課 岡田 宏介 様/高齢者公益事業部 運営管理課 課長補佐 松本 朋巳 様
所在地:神奈川県横浜市保土ケ谷区岩井町207/総戸数・定員:50部屋(全室個室)・50名/開設:2006年2月/事業主:社会福祉法人 聖隷福祉事業団
HP:https://www.seirei.or.jp/eden/yokohama/
2021年春、横浜、浦安、藤沢、宝塚、松山の5カ所のエデンの園の一部の介護居室で導入した見守りシステム「ライフリズムナ+Dr.」(以下ライフリズムナビ)。
導入から2年目を迎える今春、横浜エデンの園、浦安エデンの園の全介護居室に備わることが決まった。
導入の経緯やシステムの利点、実際に利用した現場の声など、システム運用に関わってきた5人の話から見えてきたものは、介護の質向上に対する、ひたむきな姿勢だった。
システムを利用して、
入居者の生活全体を把握
松本様:介護ロボットやAIを活用した、新しい慟き方を創造するという聖隷福祉事業団 高齢者公益事業部の事業計画に基づき、施設のニーズに応じた介護ロボットの導入を検討し始めたのが2019年でした。具体的に動いたのが2020年度。当時各自治体で介護ロボットの補助金が出たのも大きかったですね。
エコナビスタ 杉嵜(以下、杉嵜):日本全国には介護施設が2万施設ほどあり、約25万床のベッドがあるなかで、私共の見守リシステムを導入している施設は、まだ全体の1割も満たしません。聖隷福祉事業団は、全国でも先進的な施設運営をしていると思います。
松本様:先行導入施設を横浜と浦安の2施設に決め、まず、介護現場の課題についてアンケートを実施しました。その回答のなかで、介護記録の入力に時間がかかる、夜間の巡視でご入居者の睡眠を妨げてしまう、移動や移乗の介助は身体負担が大きいなど課題が浮き彫りになりました。課顆を根本的に改善するものは何かと検討した結果、「見守りシステム」の導入が決まりました。見守りシステムは、様々な会社から商品が出ています。介護部門の職場長と本部職員で福祉機器の展示会へ行き、色々な機種を見て回り、その中でライフリズムナビを選びました。ベッドまわりのみを検知する機器が多い中、居室全体をシステムでカバーできる点がメリットと感じたからです。
杉嵜:はい。ライフリズムナビは、センサーを複数設置できます。ベッドセンサーはベッドに、天井やトイレの人感センサー、扉の開け閉め、温度湿度のセンサー、居室内のベッド以外にいるときにも様々なセンサーでわかるようになっているのが特徴です。
エコナビスタ 木戸岡(以下、木戸岡):ベッドのセンサーだけだと、ベッドから離れた先は、居室内にいるのか外にいるのか、活動状況がわからなくなってしまいます。人感センサーがあれば、居室でどんな動きをされているのかがわかるようになります。
岡田様:そうですね。ベッドセンサーだけでは、夜間しか意味がなく、1日の動きを把握できません。ライフリズムナビなら、1日を通してデータとして見ることができ、日中の支援にも色々活かせるのではないかと思いました。例えば、巡視は2時間毎、状態により1時間毎だったりします。それだと断片的、点でしか見られない部分があると思うんです。それがセンサーによってある程度、線で見られるように感じます。
小久保様:全くそのとおりです。私は現在、園長という立場ですが、もともと介護福祉士で、ご入居者のケアをしていました。生活全体を見てケアをしなければならないのですが、全体を見るというのは簡単ではありません。やはり一人の目は、点でしか見られないので、それをみんなで繋げ、線や面にする作業をしていますが、難しさがあります。やはりシステムを使いながら生活全体を見るというのは大切だと思っています。
松本様:システムには居室内のカメラ設置のオプションもあります。設置について現場のニーズもありましたが、プライバシー保護の観点から、カメラ無しのセンサーだけでデータを管理する方針にしました。
岡田様:職員の中には、どうしても安全性を守りたいという観点からカメラを要望する声もあります。一方で、カメラまで入れるとその人を監視しているんじゃないかと考える職員もいます。プライバシーや尊厳を考えると、松本さんの言うとおり、センサーのみの設置が良いと思います。
じっくりと時間をかけて
現場に導入
杉嵜:導入の時期は、ちょうど新型コロナウイルスの第1波、第2波の時期と重なっていました。その中で新しいシステムを導入して、使いこなし、動かしていくというご苦労があったかと思います。オンラインでの見守りシステム導入定例会が毎月繰り返されていたことが、スムーズな稼働に結びついたのではないでしょうか。
岡田様:そうですね。毎月1回の定例会で5施設が集まり、エコナビスタさんと松本さんで、事例発表会を開催しましたね。現場では、新しいものを取り入れる時、書類だけ渡して「見ておいてくださいね」というのでは、なかなか理解が進みません。昼のカンファレンスなど、職員が集まる時間に一人ひとり丁寧に教えていくことに時間を使いました。導入後の今は、転倒について事例発表を行っています。転ぶことに焦点を当て、ライフリズムナビのより良い活用法を検討し、発表し合っています。
小久保様:新しいシステムを入れる時は誰かが中心となり、みんなに理解してもらってからでないと導入ができません。このシステムでは、岡田さんがその役割を果たし、現場で使うメリットが浸透していると思います。
岡田様:はい。自分からご入居者や担当職員と対話することもあります。システムを活用した介護の考え方や、データから判断できる事象などを伝えることで、少しずつですが浸透していっていると思います。
エデンの園とメーカーの二人三脚
活用事例とデータの共有から開発へ
杉嵜:先ほどお話にあった合同で行う定例会ですが、岡田さんが発表される、1ヵ月取り組まれた課題や改善に関する事例報告は、毎回勉強になります。開発側は現場になかなか行けないので、知らないことも多いのです。岡田さん自身が感じられた「どうしたらいいか?」という疑問など、改善すべきことに関して知る機会にもなります。「こんな機能があったら良い」といったご意見から得たヒントを元に、新たなシステムを開発してリリースする予定です。お客様から出てきた声を開発に活かすという好循環が生まれています。
松本様: このライフリズムナビの導入にあたって、現場でもかなり積極的に取り組んでもらっています。最初に横浜エデンの園がデータ分析に取り組み、残りの4施設がそこに追随する形で、今の定例会の形に行きつきました。互いに情報共有し切磋琢磨しています。初めのうちは質問もなく、私が一方的に話しているだけでしたが、現在は色々な質問をもらい、エコナビスタさんにフィードバックしています。導入からまだ一年しか経過していませんが、岡田さんをはじめ、各園の職員が成長していると日々感じています。
小久保様: 横浜エデンの園で、現在ライフリズムナビを導入している居室は、認知機能の低下や生活上の課題がある方が対象となっています。今年3月には全居室に設置されるので、ご入居者にとっての将来的な安心感につながり、エデンの園が選ばれる要素になると思っています。
岡田様:
そうですね。具体的な例でいうと、今まで自立していた方が夜間に尿失禁をするようになり、布団まで汚れることが増えてきたんです。その方の夜間帯の睡眠傾向と排泄を解析すると、よく寝ている時に生じることが判明しました。それから、夜間にトイレ誘導したり、おむつを勧める話になりました。システムが導入されたことで、職員の主観による判断ではなく、事象を客観的に把握することができています。
また、今までは意思疎通がとれていたご入居者が、状態が変化し不穏な行動が出てきた時に、睡眠の質に着目してデータを確認したところ、夜に眠れていないといった正確な情報を医師に示すことができました。これまでは、現場でデータを取るということも大変な作業でしたが、システム導入後は素早くデータを抽出することができ、作業効率も上がっています。
杉嵜: ご高齢の方ですと、睡眠パターンも人それぞれ。そういうデータも蓄積しているので、活用させていただいています。これまでは、想像だった部分がきちんとデータ化され、「こうかな?こうじゃないか?」の部分が判断しやすくなり、対応スピードに繋がると思います。
システムでできることは、システムを活用
人にしかできないことを、より手厚く
松本様: 介護の現場では、24時間ずっと見ていられるわけではないので、ライフリズムナビの導入によって、24時間切れ目なく、職員とシステムがご入居者を見守れるようになったこと。これまで主観や経験則で対応していた部分から、職員が見て接したことと実際のデータを擦り合わせて、介護サービスを提供できるようになったこと。この2点が大きな成果です。ケアの質が上がり、ご入居者の生活の質の向上につながっていると思います。
岡田様: これから全居室設置に向かうことで、業務がスマート化し、職員の手がかからない部分も出てくると思います。それで生じた時間を、ご入居者に還元していきたいと考えています。
木戸岡: ケアスタッフの皆さまがやりがいを感じる部分は、ご入居者と接していられる時間だと思います。そうした時間をより多く作れるシステムに発展するように、改善を繰り返していきます。
小久保様: 横浜エデンの園は、病院から直接入居される方、医療的なニーズが高い方が多く、看取りケアにも重点を置いています。ご家族の方からは、最期の過ごし方を尋ねられることもあります。入居されてから亡くなる最期まで、ライフリズムナビで得られたデータを用いて、園での生活の全体像が可視化できることで、ご家族の方も安心されると思います。人でなければできない部分に、より手厚く介護人材を投入するために、今後もシステムの力を最大銀に活用していきたいですね。
※本記事は、社会福祉法人 聖隷福祉事業団 高齢者公益事業部様発行「ゆかり通信 Vol.113(2022年4月15日)」の「特集 第1弾」記事を、社会福祉法人 聖隷福祉事業団 高齢者公益事業部様の許可のもとに掲載しています。
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