社会福祉法人 渓仁会
介護老人福祉施設 藤野すずらんの杜
施設長 佐々木 貴紀 様
法人名:社会福祉法人 渓仁会/所在地:〒061-2282 北海道札幌市南区藤野2条12丁目20−1/開設:2025年4月1日/床数:80名(全室個室・8ユニット)
HP:https://www.keijinkai.com/shafuku/suzuran/
2025年4月、札幌市内の社会福祉法人同士の合併という形で新たなスタートを切った介護老人福祉施設「藤野すずらんの杜」様(以下、「藤野すずらんの杜」)。全8ユニット・80床のすべてに「ライフリズムナビ+Dr.」を導入され、法人内の入所系施設としては初の全床導入事例となりました。
前編では、施設長 佐々木 貴紀 様(以下、佐々木施設長)に、導入に至るまでの経緯や、全床導入にこだわった理由、導入後の変化についてお伺いしていきます。
後編では、現場を率いる施設ケア部生活支援課課長代理(介護責任者) 矢口 誠也 様に、導入から半年で現場に起きた変化をお伺いします。
「みんなには、座って夜勤をしてほしい」
まずは佐々木施設長のご経歴からお伺いできますか。
佐々木施設長: 1998年、老人保健施設の介護職員からキャリアをスタートしました。その後、相談員として複数施設の立ち上げを経験し、札幌市内の在宅複合施設の統括者を経て、2025年1月、市内の社会福祉法人間では初めての法人合併に向けて、施設長として着任し、現在に至ります。
見守りシステムが必要だと考えるようになった原点は、どこにあったのでしょうか。
佐々木施設長: 私が介護職員として就業していた頃は、現在のような「見守りシステム」はなく、あちらこちらで鳴るナースコールに走り回って対応していました。特に人手が少ない夜勤は、毎晩ダッシュしていました。
当時はそれが当たり前だったのですね。
佐々木施設長:
先輩からもそう教わりましたし、自分でも「こんなものだ」と思っていました。ただ、世の中が変わっていろいろな機器が出てくる中で、それを導入した施設はスマートに仕事をしている。そういう情報に触れるたびに、「本来はこうあるべきだよな」という思いがずっとありました。
ですから、職員へ運営方針を伝える際に「皆さんには座って夜勤をやってほしい」と話しています。もちろん一晩座ったまま終わる夜勤なんて現実的ではありません。ですが、メリハリをつけて、無駄な動きや無駄な時間をできるだけ削り、必要な方に必要な時間をかけて、質の高いサービスを届けてほしいそれがシステム導入の背景にある考えです。
一部導入では、現場は動かない
導入の検討にあたっては、過去のご経験が影響したそうですね。
佐々木施設長: これまでに2回、見守りシステムの導入を経験しています。80床のうちごく一部に、別の施設では小規模多機能の事業所で宿泊される方向けに、いずれも見守りシステムを全床ではなく一部だけ導入しました。結果として、正直に申し上げると、ほぼ使われなくなり、埃をかぶってしまいました。これは私自身の反省です。
一部導入だと、なぜ現場に浸透しないのでしょうか。
佐々木施設長:
対象になっている方の状態は分かるので、関わったスタッフは便利さを実感できます。でも、導入していないベッドの方が圧倒的に多いため、効果を実感できないスタッフのほうが多いということになります。「自分は関係ない」「私もやらない、面倒くさい」となってしまいました。
全床に入れてしまえば、そもそも使わないと仕事にならないので、そういうことが起こり得なくなります。ですから、次の導入のチャンスがあったら、どのメーカーを選ぶかよりは、全床に入れることが重要というのが本音でした。
現場スタッフの早期巻き込みが定着のカギ
導入を振り返って、こうすればよかったと思われることはありますか。
佐々木施設長: ライフリズムナビ+Dr.の導入後にも気づいたことがあります。導入研修が、途中で止まってしまっていた時期がありました。途中から一般のスタッフを巻き込んで進めましたが、最初からスタッフを巻き込み進めていれば、さらに早く活用が進んだかもしれないと思いました。
「運用はシンプルに」
最終的に「ライフリズムナビ+Dr.」を選ばれた理由を教えてください。
佐々木施設長:
検討の過程では、複数の見守りシステムを比較しました。実際に使っている施設の見学にも行き、時間をかけて選定しました。一つのシステムでカメラもセンサーも組み合わせて運用できる点が良いと思い「ライフリズムナビ+Dr.」に決めました。複数のシステムを導入するのではなく一つにまとめて「シンプルな運用を実現したい!」その思いが強くありました。
合併直後で費用をなるべく抑えなければならない中、補助金の活用を模索し、最終的に令和7年度の介護ロボット導入支援事業での導入に至りました。ご家族や地域の方への説明会で「この後こういうシステムが入ります」と事前にご説明し、準備を進めました。
人件費を抑え、休止ユニットを動かし、そして黒字へ
導入後、経営面ではどのような変化がありましたか。
佐々木施設長:
採用面で効果がありました。今年度の運営方針では、「万が一、退職があったとしても安易に採用はしない」とスタッフに伝えています。これまでは人が抜けたところを人で埋めるのが当たり前でしたが、このシステムをしっかり使いこなしていけば、今の人数でいけるはずだと考えています。
時間外手当費用も、前年に比べて大きく減っています。もちろんライフリズムナビ+Dr.の導入だけの効果ではありませんが、貢献しているのは間違いありません。
稼働率の面でも、大きな動きがあったそうですね。
佐々木施設長: 以前から完全に物置化していた1ユニット分のスペースがある状態で前法人から引き継ぎました。ここが動いていないと黒字化はありえないと考え、昨年9月中旬にオープンしました。インフルエンザとコロナの流行のピンチもありましたが、合併から1年を迎えようとする3月に初めて黒字を達成しました。
生まれた時間が、施設の空気を変えた
職員や、ご入居者の様子に変化はありますか。
佐々木施設長:
スタッフに精神的な余裕が生まれていることはもちろんですが、そのおかげで実はご入居者も変化していると思っています。余裕が生まれた時間でスタッフがいろいろな企画を進めてくれて、その一つとして麻雀クラブが始まりました。
コミュニケーションがあまりお得意ではない男性のご入居者が、毎回楽しく参加してくれるようになりました。その方から、先日、スタッフに「相談したいことがある」と言われ、実は「お墓参りに行きたい」とのお話でした。そこでスタッフがフルサポートでお連れすることになりました。スタッフに確認すると、そのような希望は初めてお話しされたようで「こんなに楽しい時間をこの施設で過ごせているので、相談してみたら自分の願い事も叶えてくれるんじゃないか」と思われたのかもしれない。そうだとしたら、それはすごくうれしいことだと思います。
そういう時間を生み出すためにも、無駄を省くということは必要です。もしスタッフが施設内を常に動き回っていたら「いつも忙しそうだから、これは我慢しよう」となってしまう。スタッフに心の余裕が出て、少し座って仕事ができるようになれば「ちょっと話しかけてもいいかな」という雰囲気になる。現場からは、以前と比べ、ゆとりが生まれ「ありがとう」が普通に出るようになったと聞いています。
今後の展望 — データ活用による予測ケアへの期待
最後に、今後の展望と「ライフリズムナビ+Dr.」への期待をお聞かせください。
佐々木施設長:
法人の中で、入所系の施設で全床導入を実施した施設はこちらが初めてです。まずはこの施設で使いこなした実績を積み上げて、失敗も成功事例もきちんと伝え、他の施設が次の一歩を踏み出すためのきっかけになればと思っています。当法人内だけではなく、全国の介護施設様にお届けしたいと思っています。
今後、期待していることは、蓄積したデータの活用です。AIが短期・中長期の行動予測を出してくれるようになれば、私たち施設側はよりよいケアが提供できます。例えばその方の眠りが浅くなっていくちょうどいいタイミングで「おはようございます。」と声をかけたい。そうすることでご入居者と信頼関係ができ、笑顔が増えていくのが理想です。


